【小説】2040年に富裕層としてマインドフルに生きる

今を生きる私が2040年の現実の私を書き綴ります。思考を現実化させるために想像力をフル稼働して未来を語ります。

【面白い話】同情するなら〇〇〇かけて!

こんなに簡単に巻けるんだ!

たまたまネットで知った、とめなくても巻きつく便利なカーラー。

韓国の女の子たちはファッションでつけたまま外出するっていうから驚きでした。

「あった~!これこれ!」ロフトで発見しました。

太いのと細いのと3種類をゲットしました。

朝、嬉しい緊張感と共に前のめりに鏡を覗きながら、ひたすらクルリクルリと手を動かすと、あっという間に巻き終わり結果待ちです。

家事に追われながら時が過ぎついにジャッジの時を迎えました。

とはいえ、どんな結果でも修正のしようはもはやない時間でしたが、さすが流行りのカーラー外すのも楽ちんです、10秒は要しませんでしたね。

あまり勉強しないで臨んだテストが返されて点数を見る時のように鏡に映った頭部に注目、ん~~「75点!」。思った以上の出来ばい。自己評価しました。

洗面所での非日常の時間ロスがあったおかげで、ちょっと出遅れました。いざ勤務先の保育園へ、自転車の足の回転はフル稼働、最後の信号まで「やれやれ」とたどりついた所で、隣に停車した自転車からまさかの声が「先生ボサボサ!」

園児のたまちゃん、4歳児のいつもの余計な一言でした。

こんな道ばたで聞かされるとは。

「やめなさい」

「すみません」

後ろのたまちゃん、横の私と、申し訳なさそうに忙しく首を動かし、その度に美しい黒髪がヒラヒラ、タマちゃんのママ。

「確かアパレル関係だっけな~?あ~~恥ずかしい!」

「こっちがボサボサですみません」

とはさすがに言いませんでしたが、踏みつぶされた心臓をもとに戻すのは全く不可能でした。

固まってしまった顔に全集中力を込めて、目と口をアーチ型に保とうとする自分がけなげでした。

 

突然、棚の奥に封印されたカーラー達。

「私たちもう出番なしなの?」とささやいていることでしょう。

あの事件があって初めての休日の朝

「ごめんね~、ちょっと事件があって、暫く、あるいは永遠に、そっとしといて欲しいの」とカーラーたちに心で返答しながら、

光のごとく予約した美容院に向かっていました。

自転車の足を回転させぎりぎりで受け付けに到着しました。

「かけるんですか?」と10年来のイケメン担当者に予約内容を確認されました。

昔辞表を提出した時、課長に「いいんだね?」と言われた時と同じ心持で「はい」と力強く答えていました。

広がり易い髪質を出来るだけ抑えようと長年頑張ってきてくれたので、私の心境の変化に驚きを隠しきれない様子でした。

「思い切って流行りのスタイルにしちゃいましょう。似合いますよ」と背中を押され拒む理由は一片もありませんでした。

ロットが巻かれている間ずっと鏡の中の担当者の手の動きに目がキョロッキョロッ動きっ放しでした。

ベテランの技はスゴイ!ただのイケメンとかじゃないから。

実を言えば、始はちょっとした恋愛感情もなきにしもあらずだったんです。

でも、結婚してると知ってからは、ただただ技に惚れるばかりでしたね。

改めて「信じてきて良かった」って感じです。

「ありがとうございました!」

いつもエレベーターのドアまで見送ってもらえるので、毎回私からはこの一言が最後になるんですけど、今回はその一言では収まらない感謝が溢れて止まらなくて、

あくまでも心の中だけで、

強くハグしたいとかそんな気持ちでしたね。

「すみません!」

 

月曜日の朝もうカーラーを巻く取り外す時間が省かれたことで靴を履きながら鏡に映った自分をチェックする猶予が与えられました。プルンプルン揺れる前髪にうっとり見とれ「オッケー」とゴーサインの声が確かに聴こえました。

 

夢見心地でペダルに乗せた足を軽やかに動かしながらはるか前方にたまちゃんの背中が見えました。「おはよう」と爽やかに挨拶して追い抜いて行くつもりでした。

 

少しスピードを上げると、たまちゃんが振り返って笑顔で激しく手をふってきました。振り返そうとすると瞬間前を向いてしまいました。

 

たまちゃんの自転車に追いつきそうな所でママとの会話が聴こえてきました。「先生かわいい!」「そうだね」

 

「え~~!そこまでじゃないと思うけど、ヤッター」と思いながら、ぬかしつつ爽やかに挨拶を実行しようと並走となったと同時に、「かわいい」とたまちゃんの声。「ありがとう」と言ったところで、たまちゃんのママと目が合い「おはようございます」と挨拶されました。

 

「おはようございます」と返してたまちゃんを見ると笑顔で真後ろを向いてちょっと後ろの新人のエリカ先生に向かって手を伸ばしていました。

 

ママが「あぶないよ」と注意しますが、たまちゃんは「先生の髪の毛かわいい!」とエリカ先生の方向に身を乗り出して全身で大好きをアピールしていました。

 

「なんじゃこりゃ~」と息が止まり自転車ごと倒れる寸前でした。

エリカ先生も週末パーマをかけたようで何と私とそっくりのスタイルになっていたんです。少なくとも私には髪型だけそっくりと思えました。「確かに流行りのスタイルなんだ」と残念に納得しました。

 

不幸にもエリカ先生と横並びで信号待ちすることになってしまいました。たまちゃんのママの自転車は点滅で強引に信号を渡って小さくなって行きました。たまちゃんは相変わらずエリカ先生に向かって手を振っていました。

 

「パーマかけたんですね似合いますね」とエリカ先生が優しい言葉をかけてくれたのに「同情するならストパーかけて」と暴言を返してUターンしてストパーをかけるか坊主にしたいくらいの取り乱した気持で手に汗つま先はプルプルで

「たまちゃんをアッと言わせようと勇気を出してパーマをかけたのに」と後悔の念にかられていました。